【古野電気(6814)】特大上方修正と年間配当150円の衝撃

古野電気(6814)が2025年10月10日の引け後に発表した2026年2月期第2四半期(中間期)決算は、市場に大きなサプライズをもたらし、PTS(私設取引システム)で株価が上昇する強力な材料となった。中間期として売上高、各利益ともに過去最高を更新し、その勢いを背景に通期連結業績予想と配当予想を大幅に修正したことが最大の要因となった。


驚異的な中間決算とPTS急騰の要因

過去最高益の達成と通期の大幅修正

古野電気の2026年2月期中間期の連結業績は以下の通り。 項目 実績 前年同期比 売上高 686億5,300万円 +9.3% 営業利益 93億300万円 +27.5% 経常利益 101億6,900万円 +35.3% 中間純利益 101億9,000万円 +101.1%(2倍)

いずれも過去最高水準を更新した。

この好調な実績を受け、同社は通期予想を大幅に上方修正。
売上高1,375億円(+7.8%)/営業利益160億円(+39.1%)/経常利益175億円(+40.0%)/純利益155億円(+72.2%)と、すべての段階で増額となり、過去最高更新を目指す内容となった。


年間配当150円への大増配がPTSを押し上げ

決算と同時に発表されたのが特大増配である。 区分 旧予想 新予想 増額 中間配当 55円 75円 +20円 期末配当 55円 75円 +20円 年間合計 110円 150円 +40円

「連結配当性向30%以上を安定的に維持」という中計方針に基づく増配であり、これがPTS市場で株価を大きく押し上げる要因となった。


純利益急増の特殊要因と為替レートの影響

純利益の増加には、税効果会計に伴う税負担率の一時的減少という特殊要因があるが、営業利益も27.5%増と、本業の成長も堅調だった。

また、為替前提の変更(ドル145→148円、ユーロ157→166円)が寄与した。
この見直しだけでも売上+12.2億円、営業利益+4.5億円の上方要因となり、業績を押し上げた。


業績を牽引する「舶用事業」の深層分析

古野電気の成長ドライバーは、依然として舶用事業である。 項目 実績 前年同期比 売上高 599億8,200万円 +11.4% セグメント利益 95億1,700万円 +37.5%


商船向け需要の継続的な高水準

商船の新造船向け機器販売が増加し、既存船のリプレイス・保守サービスも国内外で好調。
特に、GHG削減対応船の需要が旺盛で、造船会社の高い受注残が続いている。

地域別では、

  • アジア:新造船向け販売が好調
  • 米州:プレジャーボート市場は軟調だが、戦略製品販売と関税前駆け込み需要で増加

収益性を改善させた製品構成の変化

高付加価値製品の比率が上昇し、利益率の向上が顕著。
単なる数量拡大ではなく、事業構造の質的改善が進んでいる。


課題事業と将来への戦略的投資

一方で、すべての事業が順風満帆というわけではない。


産業用事業・無線LAN事業の明暗

事業区分 売上高 前年同期比 セグ利益 前年同期比 産業用事業 69億5,800万円 +0.1% 1億8,700万円 -37.6% 無線LAN・ハンディターミナル 15億6,100万円 -16.0% 900万円 -92.3%

  • 産業用事業は、中国ヘルスケア市場の価格競争激化で販売減。防衛装備品事業も減収だが、下期には回復見通し。
     一方、ITS・GNSS事業は海外需要が好調。
  • 無線LAN事業は、文教向け需要が低調で販売減。

成長に向けたDX・人財への戦略投資

古野電気は、DXと人財強化を中期テーマに掲げている。

  • 舶用機器事業部内にDX推進部を新設
  • RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術で技術継承を支援
  • 遠隔VDR年次試験の世界初成功など、技術革新にも注力

今後の見通しと注目すべき経営指針

健全化する財政状態と高水準の自己資本比率

指標 前期末 中間期末 総資産 ― 1,273億1,800万円 純資産 ― 803億2,400万円 自己資本比率 58.4% 62.7%

短期借入金の減少などにより負債が減り、強固な財務基盤を構築。
これが今後の戦略投資の原資となる。


次の成長ステージ「フェーズ3」への期待

古野電気は2030年に向けたビジョン「FURUNO GLOBAL VISION “NAVI NEXT 2030”」の下で、すでに売上1,200億円・営業利益率10%を前倒し達成している。

2027年2月期からは次期中計「フェーズ3」へ移行予定。
新たな数値目標は2026年1〜2月頃に発表予定。

市場の関心は、

  • 舶用事業の高収益構造をどう拡張するか
  • 低収益事業の再構築をどう進めるか
    に集まっており、この「次の成長ステージ」が株価の方向性を左右する重要局面となる。

まとめ

  • 特大上方修正と年間配当150円の大増配
  • 為替円安、舶用事業の高成長、収益構造の改善
  • DXとフェーズ3で次の成長期へ

古野電気はまさに「業績・株主還元・成長戦略」の三拍子がそろった企業として、今後も注目度の高い銘柄となりそうだ。

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