2025年10月9日(引け後)発表の2025年度第2四半期(中間期)連結決算は、同社が進める構造変革の成果と、主力の国内CVS(セブン‐イレブン・ジャパン:SEJ)が抱える短期課題を同時に示した。連結では営業利益増・純利益大幅増を確保する一方、通期の営業収益・営業利益を下方修正するねじれが発生している。本稿では、中間期の全体像とセグメント別の明暗、通期見通しと成長戦略の実行度を整理する。
1. 中間期連結業績:純利益が大幅上振れ
2025年度中間期(3月1日〜8月31日)、連結営業収益は5兆6,166億円(前年比93.1%、計画比97.1%)。海外CVSのガソリン単価下落がトップラインを押し下げた。一方、連結営業利益は2,083億円(前年比111.4%、計画比105.8%)と増益。スーパーストア事業や海外CVSの改善が寄与した。
とりわけ注目は親会社株主に帰属する中間純利益1,218億円(前年比233.1%)。営業面の堅調さに加え、構造変革の完遂で特別損失が大幅縮小(前年862億円 → 今期312億円、約550億円改善)した効果がボトムラインを押し上げた。改革効果が損益計算書の下段に明確化した格好だ。
2. セグメント別:国内は減益、海外は利益貢献
2-1. 国内CVS(SEJ):計画未達とコスト増
SEJの中間期営業利益は1,217億円で計画比92.8%、前年比95.4%の減益・計画未達。既存店売上は**+0.8%に留まり、商品荒利率31.8%(前年比-0.3pt)とやや悪化。主因は販管費の増加で、広告宣伝費の強化、人件費単価上昇、店舗増による地代家賃、電力費上昇など複合要因**が重なった(システム償却減でのコスト減は相殺不十分)。
ただし成長施策は成果が出始めている。「出来立てカウンター商品」売上+75.3%、「セブンカフェベーカリー」導入3,064店で、導入店は荒利率+0.1ptの改善効果。差別化領域の手応えは確認できる。
2-2. 海外CVS(SEI):コスト統制と垂直統合が奏功
SEIの営業利益は801億円、前年比109.3%で増益・計画超過。ガソリン単価下落で収益は減少したが、抜本的変革とコストコントロールが寄与し、商品荒利率33.2%(+0.2pt)へ改善。ガソリン事業の垂直統合で荒利額が大幅増、販管費も人件費適正化・直営店減少・耐用年数見直しなどで**▲75百万ドル削減。さらにレストラン併設店を中間期50店**開設、**7NOW売上+21.3%**と成長施策も進展している。
3. 通期予想の修正:営業減益・純利益増益のねじれ
修正後の通期連結予想は営業収益10兆5,600億円、営業利益4,040億円へ下方修正。営業利益▲200億円の主因は国内CVS▲300億円。SEJの既存店売上見通しは**+2.5%→+0.9%、商品荒利率の前年差見通しも+0.1pt→-0.3pt**に引き下げ。
一方、親会社株主に帰属する当期純利益は2,650億円へ+100億円上方修正。中間期で確認された特別損失の想定以上の低減が営業段階の落ち込みを補った。これによりのれん償却前EPSは145.33円→150.00円へ上方修正、自己株式取得の進捗も重なり実質EPSは成長が見込まれる。
4. 進む構造変革と株主還元
事業ポートフォリオ転換では、ヨーク・ホールディングスとセブン銀行の非連結化が完了し、CVS専業体制が確立。SEIのIPOは2026年下期までの実現に向けて実務準備が計画通り進行。資金の成長投資・株主還元への循環を狙う最重要施策だ。
株主還元は、**自己株式6,000億円(今期)・累計2兆円(2030年度まで)**を回収資本から充当。**9月末時点の進捗率58.8%**と順調。累進配当も継続し、2025年度年間配当は50.0円の見通し。
5. グローバルCVSの成長戦略:実行フェーズ
- フレッシュフード差別化
SEJは「セブンカフェベーカリー」「出来立て商品」を全国展開、5,000店超への設備投資を進め、2026年度の成長軌道復帰を示唆。SEIは2030年度までにレストラン併設1,100店を新設し、体験価値を強化。 - 店舗ネットワーク強化
SEJは2030年度までに純増約1,000店。SEIは新標準店舗を約1,300店拡大し、**商品平均日販8.2千ドル(現状比+45%)**を狙う。 - 7NOW拡大
SEJは2030年度売上約1,200億円、SEIは北米人口カバー率50%超を目標に利便性を再定義。 - HD機能のアップグレード
CVS専業化に合わせて本社機能を強化。販管費を2030年度までに約810億円から半減する目標を置き、統合マネジメントと厳格な投資基準で規律ある成長を図る。
6. 結論:国内回復が変革の成否を決める
今中間決算は、特別損失の縮小と資本政策の推進によりボトムラインの強さを示し、構造変革の定着を裏づけた。一方で、国内CVSの計画未達と通期下方修正は、インフレ下での販管費管理と差別化商品の荒利改善の遅れという短期課題を浮き彫りにする。
今後は、海外のコスト統制・垂直統合・フレッシュフードの成否を維持しつつ、国内で**「出来立て」等の施策効果を横展開**できるかが焦点。2026年度に確実に成長軌道へ復帰し、市場の信頼を回復できれば、**企業価値の飛躍(過去の買収提案を上回る評価)**も視野に入る。
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