【来週の決算注目】アドバンテスト・キーエンス・日立・東エレクを「矢印」で読む!通期ガイダンスと株主還元の焦点

来週は、日本を代表する時価総額上位企業4社—アドバンテスト、キーエンス、日立製作所、東京エレクトロン—の決算発表が集中します。これらの決算は、世界経済の動向、特にAIブームの持続性、半導体サイクルの転換点、そして日本企業の構造改革の進捗を測る試金石となります。本稿では、各社の直近の決算情報と、来週の発表で特に注目すべきポイントを深掘りします。

アドバンテスト:AI特需は過去最高益を牽引、次期ガイダンスに注目

アドバンテストは、AI関連需要の強さから、FY2026 第1四半期において四半期ベースで過去最高の売上高、営業利益、当期利益を達成しました。

突出した収益力と成長ドライバー

指標FY2026 Q1通期見通し(FY2026)
売上高2,638億円8,350億円
営業利益1,240億円3,000億円
営業利益率47.0%
主因ハイエンドSoCテスタの出荷増による製品ミックス改善、スケールメリット、コスト管理

同社は、Q1の実績が想定を上回ったこと、およびAI関連需要の持続的な強さを背景に、FY2026通期業績予想を上方修正しました。通期売上高は8,350億円、営業利益は3,000億円を見込んでいます。

成長の「調整局面」と再加速の見通し

注目すべきは、同社がFY2025下期について、次世代デバイスへの移行タイミングに伴う一時的な調整局面(消化期間)を想定している点です。Q2決算では、この調整局面の規模が当初想定通りに収まるのか、あるいは市場で懸念されている以上に長引くリスクはないのかが確認されるでしょう。

しかし、同社はFY2026については極めて楽観的な見通しを維持しています。ウェーハ生産能力および先端パッケージングの増強が、半導体の数量とテストキャパシティの需要をさらに押し上げると予測されています。AIアクセラレータ市場では、汎用GPUとカスタムASICの両方が立ち上がりつつあり、メモリ分野ではHBMの世代交代が進んでおり、これらの成果がFY2026に本格的に顕在化すると期待されています。

東京エレクトロン:下方修正の背景にある「生産性向上」と長期戦略

東京エレクトロンは、足元の顧客の投資動向の変化を受け、FY2026通期業績予想を下方修正しました。

下方修正の複雑な理由

指標FY2026 Q1通期見通し(修正後)
売上高5,495億円2兆3,500億円
営業利益1,446億円5,700億円
営業利益率26.3%

この下方修正の背景には、単なる需要の減少だけではない複数の要因が絡んでいます。

  1. 顧客の歩留まり改善による生産性向上:HBM需要は旺盛であるものの、顧客側での生産技術や歩留まりが向上したことで、投資計画が一部見直されました。
  2. 需給バランスの最適化:NANDメーカーは収益性を重視し、需給バランスを慎重に見た投資計画の調整を行っています。
  3. 投資スタイルの変化:一部先端ロジック顧客が、先行投資型から着実な投資スタイルへと切り替えました。

これらの要因は、顧客の案件が「消滅した」わけではなく、「半年程度のずれが生じた」ものとして捉えられています。

WFE市場の底打ちとHBM・先端ロジックの牽引

同社は、四半期売上高の観点からCY2026の1月〜3月期か4月〜6月期に底を打つと考えています。長期的な視点では、AIサーバー向け半導体の技術革新は不変です。CY2027に予定される次世代AIサーバー向けデバイスでは、GPUのトランジスタ数が現在の約2.5倍に、HBMのメモリ容量が現在の約4倍に増加すると予測されており、この需要がCY2026後半からWFE市場の成長を加速させる牽引役になると見込まれています。

また、安定収益源であるフィールドソリューション(FS)事業は、Q1で売上高1,412億円と前期比で増加しており、先端領域を中心に顧客の稼働率が高い状態が続いていることが確認されました。

下方修正に伴い、連結配当性向50%を基本方針とする同社は、FY2026の年間配当予想を485円に修正しました。しかし、機動的な自己株式取得の実施は引き続き検討していく姿勢を示しています。

キーエンス:高利益率の維持と海外市場の牽引

キーエンスの第1四半期(2025年3月21日〜2025年6月20日)の連結業績は、売上高2,610億円、営業利益1,293億円で、前年同期比では増収増益となりました。

利益率の低下傾向

指標Q1(2025/3/21〜6/20)前四半期比
売上高2,610億円▲8.1%
営業利益1,293億円▲15.3%
営業利益率49.5%前期53.8%から▲4.3pt

最大の注目点は、同社の代名詞である営業利益率の四半期推移です。Q1の営業利益率は49.5%であり、前四半期(2025年1月-3月期)の53.8%から4.3ポイント低下しました。売上高が前期比で8.1%減少したのに対し、営業利益は15.3%減少しており、短期的に収益性が圧迫された構図が見られます。Q2決算では、この利益率の低下が一時的なものだったのか、あるいは構造的なものへと移行しつつあるのかを見極める必要があります。

海外市場の成長モメンタム

地域現地通貨ベース成長率(前年同期比)補足
北中南米+14.2%海外売上比率は67.3%
アジア+17.1%欧州は慎重姿勢

世界経済の不透明感が続く中、同社の成長は海外市場が支えています。海外売上高の構成比は67.3%に達しており、グローバル展開の成果が出ています。通期業績予想は未開示ですが、配当予想(年間350.00円)には修正がなく、安定的な株主還元方針を継続しています。

日立製作所:エナジー上振れとリスクの相殺、そしてLumadaの進捗

日立製作所のFY2026 第1四半期決算は、エナジーセクターの好調が目立ったものの、全社通期見通しは据え置きという複雑な結果でした。

エナジーセクターの上方修正と収益性改善

項目内容
エナジー通期Adj. EBITA見通し前回比+320億円へ上方修正
Q1エナジー利益率前年から+3.5pt改善(高電圧製品比率上昇・生産性向上・製品ミックス改善)
受注動向ハイボルテージ・変圧器を中心にベースオーダーが二桁成長

通期見通し据え置きの背景:米国関税の間接影響

  1. 米国関税の間接影響:IT分野、特にDSSセクターの日立ヴァンタラのストレージ事業において、顧客の投資抑制や競争激化が顕在化。通期でAdj. EBITA約△300億円の想定リスクを織り込み。
  2. 事業悪化リスク:関税の間接影響を含め、確度は高くないが約△200億円の事業悪化リスクを織り込み。

Lumadaの進捗と財務の状況

指標FY2026 Q1補足
Lumada売上(全社)前年同期比+38%エナジーでは+344%
コアFCF3,514億円大型プロジェクトの前受金集中による一過性要因が大きい
通期コアFCF見通し6,400億円前受金増の反動減・投資増加を織り込み
自己株式取得上限3,000億円(2026年3月まで)2025年9月30日までに約1,716億円取得済み

株主還元に関しては、既に決議済みの自己株式の取得(上限3,000億円、2026年3月まで)を着実に実行しており、Q2決算ではこの進捗ペースが維持されているかが確認されます。

総括:市場の二極化と投資戦略の評価

来週の決算は、グローバルな需要動向が企業間で明確に二極化していることを示唆します。

  • アドバンテストはAI需要の恩恵を最大限に享受していますが、投資家はFY2025下期の一時的な調整の深さと、FY2026の成長再加速の確度を判断する必要があります。
  • 東京エレクトロンは短期的な市場の調整(顧客の生産性向上や投資の慎重化)に直面していますが、研究開発投資を継続しており、AI/HBMといった長期ドライバーに対する戦略的なコミットメントを評価する必要があります。
  • キーエンスは高収益体質を維持しつつも、利益率のQoQ低下の背景にある要因(販管費の増加や製品ミックスの悪化など)が続くかどうかが焦点です。
  • 日立製作所は、エナジー事業の構造改革の成果がグローバルリスクを相殺する形で現れており、Lumada事業の海外での収益回復の兆しと、積極的な株主還元策の継続が注目されます。

投資家は、今回の決算で各社が提示する通期ガイダンス(特に変更点)と、収益性を測る指標(営業利益率)の動向、そして株主還元に対する姿勢を総合的に評価し、次の投資サイクルに向けた戦略を練る必要があるでしょう。

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