2025年10月14日の取引終了後に発表されたイオンの2026年2月期第2四半期(中間期:2025年3月1日~8月31日)連結決算は、営業収益・営業利益が中間期として過去最高を更新し、構造改革の成果が明確に現れた内容となりました。
世界的な物価高と国内での節約志向の継続という厳しい消費環境下において、イオングループは中期経営計画で掲げる「5つの変革」を着実に実行し、収益性の改善を達成。長年の課題であったGMS事業の損益が大きく改善し、ディベロッパー事業やヘルス&ウエルネス事業といった成長セグメントが利益を牽引しました。
重要数値サマリー
項目 | 数値 | 前年同期比 | ポイント |
---|---|---|---|
営業収益 | 5兆1,899億70百万円 | +3.8% | 中間期として過去最高 |
営業利益 | 1,181億29百万円 | +19.8% | 中間期として過去最高 |
経常利益 | 1,064億68百万円 | +18.5% | 増益継続 |
親会社株主に帰属する中間純利益 | (増益幅)40億48百万円 | — | 総合金融等の一時費用計上で伸びは限定 |
過去最高益を牽引した構造改革の成果
営業収益は5兆1,899億70百万円(+3.8%)、営業利益は1,181億29百万円(+19.8%)と中間期過去最高を更新。経常利益も1,064億68百万円(+18.5%)と増益。純利益の増益幅が限定的だったのは、総合金融事業の事業ポートフォリオ見直しに伴う特別損失等の一時費用計上が影響しました。
この高水準の営業利益を支えたのは、主にGMS事業とSM事業における構造改革の進展です。
GMS事業の抜本的改善
- 営業収益:1兆8,186億72百万円(+3.6%)
- 営業損失:2億25百万円(前年同期比で80億35百万円改善)
デジタルシフトと価格戦略が奏功。インフレ対応として「トップバリュ ベストプライス」の拡販を強化し、荒利益額の最大化を図りました。グループ全体のPBトップバリュ売上高は前年同期比111.7%と伸長。
店舗業務のDX化が進み、GMS人時生産性は107.0%へ改善。セルフレジやAI発注・売価変更を含む従業員用「オールインワンデバイス」導入で作業効率が上昇。捻出した人時を接客・売場改善に再配分。ネットスーパー事業は当中間期に黒字化し、デジタルチャネルの収益化も前進しました。
SM事業・H&W事業も二桁増益
- SM事業:営業利益129億34百万円(+28.0%)。都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」1,262店舗へ拡大、いなげや統合の寄与、U.S.M.Hの営業収益+33.4%が牽引。
- ヘルス&ウエルネス事業:営業利益227億7百万円(+22.8%)。食品が好調、調剤併設店舗2,287店舗へ増加し調剤部門が牽引。
成長セグメントの安定的な利益貢献
ディベロッパー事業の過去最高益更新
- 営業利益:328億86百万円(+20.1%)。営業収益・営業利益・経常利益のすべてで中間期過去最高。
- 国内:既存モール活性化リニューアルに加え、猛暑を背景に涼感スポット施策が奏功し入館客数103.7%。インバウンド回復で専門店免税売上高は約1.5倍。
- 海外:ベトナム既存モール専門店売上+8.5%、中国+3.3%と堅調。
サービス・専門店事業の多角的な貢献
- 営業利益:168億36百万円(+16.7%)。
- イオンディライト:新規受託増、省エネ工事受注拡大、業務デジタル化で増収増益。
- イオンファンタジー:猛暑で屋内遊戯需要増、キッズプライズ部門+17.9%(117.9%)が牽引し、売上高・営業利益ともに中間期過去最高。
総合金融事業と特別損失
- 営業収益:2,763億71百万円(+8.3%)。国内有効ID3,749万人、カードショッピング取扱高105.4%。
- 営業利益:269億68百万円(-1.9%)。マレー圏の債権残高拡大に伴う貸倒関連費用増、海外子会社の不適切会計修正に伴う税金等調整前中間純利益▲38億83百万円など一時要因が影響。
- 減損損失68億26百万円を計上し、事業ポートフォリオ見直しを加速。
今後の見通しと中期経営計画の進捗
通期(2026年2月期)の連結業績予想は据え置き。営業収益10兆5,000億円、営業利益2,700億円を目指します。中間期の実績進捗率は営業利益で43.7%であり、通期達成には下期のさらなる加速が必要です。
経営基盤の強化と大規模再編
1. デジタルシフトと生産性向上
アプリ「iAEON」ダウンロード1,800万超、新AEON Pay稼働でID共通化を推進。1to1マーケティングを強化し、DX投資が人件費・物流費高騰を相殺。GMS人時生産性107.0%など可視化された成果につながっています。
2. 大規模な経営再編
首都圏・近畿圏でU.S.M.H、ダイエー、光洋、マックスバリュ関東、イオンマーケットとの経営統合協議に向けた基本合意書を締結。物流・後方機能の統合やシステム共通化で競争力を強化。イオンモールとイオンディライトの完全子会社化により、グループ資源の迅速・柔軟な相互活用体制を整備。
3. ヘルス&ウエルネスの統合とアジアシフト
ツルハホールディングスとの資本業務提携が最終契約段階。2032年2月期に売上3兆円、営業利益2,100億円を目指す構想を掲げ、アジアNo.1のグローバル企業を目指します。国際事業はベトナムを最重要市場と位置づけ、ハイズオン、タインホア、ハロンでのSC着工など出店を加速。ベトナムの堅調な成長を背景に国際事業の営業収益は+2.7%と伸長し、アジアシフトが着実に進展しています。
まとめ:改革をテコに通期目標達成へ
今回の決算は、イオングループが中期経営計画で推進してきた「構造改革」と「デジタル投資」が、長年の懸案であったGMS事業の体質改善として結実し始めていることを示しています。物価高の逆風下でトップバリュの価格訴求力が売上を押し上げ、店舗の生産性向上が利益確保につながる好循環が生まれつつあります。
一方で、特別損失の計上により純利益の伸びが抑制された点、DS事業・総合金融の一部で費用増による減益が見られた点は注視が必要です。下期はPB中心の価格戦略強化、DXによる生産性向上、首都圏・近畿圏の大規模再編を計画通り進めることが通期達成の鍵。特に、イオンモール/イオンディライト完全子会社化のシナジー最大化とスケールメリットの実現が、持続的成長に向けた最大のレバレッジとなる見込みです。
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